2020年03月01日

本気で手荒れを治す、防ぐにはどうしたらよいの?〜皮膚科学の観点から〜

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感染症対策で手洗いやアルコール消毒が励行されています。
そろそろ手荒れが見過ごせないレベルになってきている方も少なくないではないでしょうか。

今回は皮膚科学の視点から、本気で手荒れを治したいとき、治ったあと防ぐためには何を使い、どうしたら良いのかをご紹介します。


■目次


 1.手荒れを治すのは医薬品で
 2.本気で手荒れを予防したいなら、まずは肌の構造を知る
 3.実践ハンドケア 〜守る〜
 4.実践ハンドケア 〜与える〜
 4.まとめ




1.手荒れを治すのは医薬品で



湿疹や出血を伴うひび割れなどがあるときは、化粧品(ハンドクリーム)で治そうとせず、速やかに医薬品を使いましょう。
医薬品・医薬部外品(薬用化粧品)・化粧品にはそれぞれ定義があり、役割が違います。


医薬品
 明確な効果とともに副作用の恐れもあるもの

化粧品
 清潔や美化のため、皮膚や毛髪を健やかに保つことが目的とされ、人体に対する作用が緩やかなもの

医薬部外品
 医薬品と化粧品の中間に位置するもの。ある特定の成分を規定の濃度含めると、対応する特定の効果を謳うことができるもの。医薬部外品のなかで、特に化粧品のような使い方をするものを「薬用化粧品」と呼ぶこともある


化粧品は作用が緩やかなものなので、強い痛みや異変が起きているときは遠回りすぎるし、医薬部外品も同様です。

湿疹、出血を伴うひび割れや強いかゆみ、痛みなどがあるときは皮膚科医に相談して薬を処方してもらうか、ドラッグストア等で薬剤師に相談することが大切です。

ステロイド等の強い抗炎症作用を持つ医薬品を使うことに抵抗がある人もいるかもしれませんが、医師は症状や部位によって適切な強さの薬を当然選んでくれています。


素人判断したり、根拠のない都市伝説に振り回されることなく、専門家である医師を信頼すると良いと思います。




2.本気で手荒れを予防したいなら、まずは肌の構造を知る



肌には自らを守るバリア機能という仕組みがあり、本来はそれによってうるおいは守られています。

肌の一番うえの部分、角質層の水分のうち、約80%ほどが角質細胞間脂質に、残り20%弱がNMF(天然保湿因子)によって守られており、皮脂によって守られているのはたった2,3%ほどです。

これらの成分(要素)は水で流すだけ、何かに触れるだけで簡単に奪われます。また、加齢とともに角質層や真皮(肌の土台の部分)水分量やうるおいを守る物質の量も質も落ちてきてしまいます。そのため、若い人よりも年齢を重ねた人の方が肌荒れを起こしやすいのはご存じのとおりです。

さらに、界面活性剤には油分と水分を混ぜる性質があるため、石けんやアルコールを頻繁に使うとこれらの成分が加速度的に奪われ、急速な肌荒れや回復しにくい肌荒れが起きます。



3.実践ハンドケア 〜守る〜



肌の水分を守る成分は水で流したり、何かに触れるだけで失われるので、単純にはそれらとの接触回数を減らすのが有効です。

ただ、現状として手洗いやアルコールとの接触を減らすことは別の観点で無理ですから、ふだんは余計な刺激を少しでも減らすために綿か絹の手袋をします。化学繊維を含むものは、手荒れがひどい場合それすらも刺激になるので綿か絹がおすすめです。

炊事や洗濯、掃除など水を使う作業のときにゴム製やビニル製の手袋をつけるのは、多くの方が実践されているかと思いますが、もちろん有効です。手指は使う頻度が高い分、ちょっとやそっと守ってあげてもなかなか回復しません。確実に毎回実行する「小まめに守る」ことも大切です。

「守るケア」として意外と知られていないのは、撥水剤をたくさん含むハンドクリームを使うこと。

撥水剤は植物油や動物油、ミネラルオイルなどの油分とは異なり、界面活性剤にも耐性があるため、せっけんで手を洗っても流れ落ちにくく、手指のうるおいを守る成分をラップのように包んで守ります。

化粧品に含まれる代表的な撥水剤とはシリコーン油のことで、成分名はジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジメチコンなどです。




4.実践ハンドケア 〜与える〜



医薬品で炎症を抑えたら、今度はバリア機能を回復させることが再発を防ぐことに直結してきます。

医薬部外品のハンドクリームに含まれていることが多い、抗炎症作用や消炎作用、抗アレルギー作用を持つ成分は、要は医薬品の代替成分であったり、同じ成分の低濃度のものです。これらを使ってもバリア機能を回復させたり、補助することにはなりません。

先にご紹介しましたが、肌の水分を守っているのは8割が角質細胞間脂質、2割弱がNMF(天然保湿因子)です。

これらの成分を与えることで、肌のバリア機能回復をサポートすることができます。

肌の水分量を守るのに中心的な役割を果たしている角質細胞間脂質とその類似成分には、ヒトセラミド、動物性セラミド、植物性セラミド、合成セラミドなどがあります。これらを含むハンドクリームを使用するか、ハンドクリームを塗る前にそれらの成分を含む美容液などを下塗りします。

セラミドはヒト・動物・植物≧合成の順で保水力が高いですが、原料の高さもほぼ比例します。

つまり、ヒト型セラミドを含むものは製品価格が高くなりやすく、現実問題としてそういう事情から低濃度になりやすいです。化粧品の成分は濃度も重要で、どんなに良い成分でも薄ければ効果が発揮されにくいです。贅沢をいえば、なるべく高濃度に含まれるものを使えれば理想です。

角質細胞間脂質(と類似成分)を使うのが予算の都合上難しいようであれば、カチオン化されたヒアルロン酸を取り入れるのもおすすめ。
セラミドよりは原価が安い成分で、水に流されにくい性質をもっているため、皮膚に吸着されやすく、長く肌にとどまって水分量を維持します。



5.まとめ



今起きている肌荒れ(湿疹、出血、強いかゆみや痛み)は皮膚科医や薬剤師に相談のうえ、医薬品で治します。

治したあとは肌がもともと持っているバリア機能を回復させ、機能させることが予防につながります。

そのためには、角質細胞間脂質や水に強いカチオン化されたヒアルロン酸などを取り入れ、角質層の水分量を維持し、撥水剤や手袋などを使って手指を徹底的に水や物理的刺激から守ること。

手指は頻繁に使う分、顔やその他の部位よりも回復がゆっくりです。

諦めず、サボらずに、これらのケアを辛抱強くつづけることこそが肌荒れからの回復、再発を防ぐ近道です。


以上、皮膚科学の観点で手荒れを治す、防ぐにはどうしたらよいの? をお送りしました。




<本日の所要時間2時間>

次回、今回の内容を踏まえ、市販されているハンドクリームを取り上げながらもう少し深めてみたいと思います。

数えていないので不確かですが、恐らく10年の間に数百点はハンドクリームの成分見ていると思うのですが、今回挙げた条件を満たすハンドクリームは数点しか心当たりがありません。

顔用の化粧品より娯楽色が強いのがハンドクリームというカテゴリーの特徴です。

化粧品は本質的にはそれでもいいのですが、本気で肌荒れを予防する製品を探している人には難しい問題ですよね。



***


──ちょっと越権行為になりますので、戯言として聞いてください。

ステロイドを使い続けると肌がボロボロになるという話を聞いたことがあるでしょうか?

成分マニアのエステティシャンから見ると、この話にはやや誤解もあるように思います。


ステロイドは炎症を抑えるけれど、肌のバリア機能を回復させることはしません。

肌が健やかな状態を維持するには、炎症などの異常が治まったあと、バリア機能を回復させ、正常に稼働してもらわなければなりません。

炎症を抑えるだけでは、それを起こす素地は変わっていないので、繰り返すのはある意味当然のことではないかと思います。

専門家である医師を信頼し、疑問点は感情的にならず、冷静に確認することが大切だと思います。


ラベル:スキンケア
posted by せんたくびより at 19:30| Comment(0) | 美容の豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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